百聞は一聴にしかず

Catch The GO'S SOULというHPにあったゴスペラーズの曲紹介を中の人が移設しています。

ミモザ

直前のアルバムに収録された「コーリング」に引き続き、清水信之氏をアレンジに加え、
いかにもブラコン、80年代後半から90年代に初めにかけての音楽の潮流を感じることができる一曲。
アレンジャーの名前を聞いた時に曲調のイメージは出来上がっていたが、見事に予想通りであった。
ちなみに、トヨタの「Isis」という新車種のCMソングになった。
このCM、出ているのは唐沢寿明小雪
流行のミニバンタイプで、ターゲットが30代くらいの、お金は払ってもいいからゆとりがほしい、
という生活を送っている世代ではないかと思う。
なので、ゴスペラーズのイメージと「ミモザ」の持つイメージがぐっとはまったと思う。
この世代ってちょうどブラコン世代だし。

Aメロの低音からサビの高音まで、声のコントロールを駆使しなくてはいけない。
テレビなどで聴いていてもよくわかるが、「愛の形を確かめて♪」の「を」の音は毎回不安定だ。
あれはかなり難易度の高いメロディであるからして、かわいそうだから許してあげよう。
最後のサビの繰り返しで出てくる酒井氏の声がいいアクセントになっている。
最近はすっかり男くさくなった彼の声であるが、やっぱりこの声じゃないとねという
なつかしのクリスタルボイス。一気にBack to Basicだ。
黒沢・酒井・村上の掛け合いは絶品であるが、テレビサイズだとやや煩わしい。
CDのフルコーラスだと、一度シンプルなサビが入って、その次から掛け合いになる。
コーラスもかなりベタ。ここでコーラスを!というところにコーラス。
特に奇をてらわないコーラスだけど、うまさがひときわ目立つ。
シンプルが故の難しさがあるのだと思うけれど、そこがいちばんすばらしい。
ミモザの花の季節を」の村上氏の裏コーラスがまた絶品。
たまらなくキモチイイ。
「ただまっすぐに運命を迎えにいくだけ」の裏に入る「Ah~♪」というコーラスも最高。
安いコーラスだけど、その安さがブラコンっぽいなぁと思ってしまう。
ウンチクなんかいらない、生理的な気持ちよさというのがあの時代なのかもしれない。

しかし、ちょっとだけ仕掛けを感じるところがある。
「二人巡り合えたら」の村上パート。
突然、ファルセットが出てきていいアクセントになっているが、あれってのは必然である。
あのフレーズを黒沢氏が歌うことは物理的に不可能だ。
いや、歌って歌えなくはないが、大サビが持つ役割である場面転換性が出ない。
あのファルセットがあるから次のフレーズも生きてくる。
試しにカラオケで歌ってみるといい、全部を一人で。

シンプルながらも久々にゴスペラーズのセンスが現れた佳作である。
「告白」以来のお気に入り。