百聞は一聴にしかず

Catch The GO'S SOULというHPにあったゴスペラーズの曲紹介を中の人が移設しています。

Love has the power

コンテンポラリー・ゴスペルの大御所、Kirk Franklinに作ってもらったオリジナル。
ゴスペラーズのオリジナルとしては、全編英語詞は初めて。
ご一緒にお仕事した縁でどさくさに作ってもらったような印象だけれど、
なかなか力のある名曲。
まさにコンテンポラリィなバックトラック、メロディ。
この手の音楽を日本の中で聴くのは、いろんな音楽が溢れ始めた今の日本でもやっぱり難しい。

歌詞の中身は細かく訳しても仕方ないので、意訳的にまとめると、
 “自分の周りは煩わしいことばかり。
 世界中でも終わりのない悲しい出来事が続いている。
 この連鎖を終わらせるものは何なのか。

 愛には力がある。
 愛とは信じること。愛とは手を取り合うこと。
 恐れることなく、ともに祈れば、神は答えを導いてくれるだろう。
 愛の力で、私達は救われるのだ”

日本でこの手の歌詞がまかり通るのは、たまに出てくる大物アーティストが参加して
荒稼ぎするチャリティソングぐらいなもの。
とってつけたような浮いた歌詞に、たいてい寒気を感じる。
「現実を見てきた」とかなんとか言いながら、楽曲に対するウンチクを語ったところで、
このアーティストのベースに歌詞の世界観は元々ないんだろうな、と感じさせられる。
っていうか、この日本という国にいる人間なんてそんなもんなのだ。
一方、世界にはこういう世界観を歌にしても、しっくりくるような価値観を持った人種、民族がいる。
けして、浮ついていない。生活にぴったりと寄り添うことができる。
「ゴスペル」というジャンル自体は狭いけれど、実はあらゆるジャンルの曲がこういう価値観を
根底に抱えているように感じる。
これが、アメリカという国に住む人たちの“心”なのかもしれない。
宗教観じゃないのよ、あくまでも毎日の生活に根付いた価値観。

しっかしまぁ、なんだ。
どっかの誰かさんの英語はひどいなぁ…。
声質がなせる技なのか、特別ひどく聞こえるなぁ…困りモンだ。
レコーディングの時にレッスン受けてたって?
……まぁ、(音楽に関しても)二物は与えないというやつかもしれないけど。

 

Street Corner Symphony

同名の、ゴスペラーズ出身アカペラサークルに贈った曲。
贈った曲ということで、全編CDに入れることはせず、インタールードとして一部だけ入れている。

Doo-Wop調なのだが、コーラスや節回しが独特で歌うのは結構難しいと思う。

初出は2004年12月25日に早稲田大学で行われた「音楽ボランティア活動支援チャリティライヴ」。
この日に合わせて5人全員でアイデアを出し合いながら10日間で作り上げた。

大隈銅像脇で歌っていたことなど学生時代の思い出が盛り込まれた歌詞に、
サークルへの愛と感謝の気持ちがこもっているように感じる。

 

『Street Corner Symphony ~Reprise』

1曲目と同じ曲だが違うパート。
アルバムを前半と後半とにわけるような位置づけだと思われる。

 

コーリング

てっちゃんが、”あの”清水信之さんにアレンジしてもらって大喜びな一曲。
アレンジが出来上がってきたとき、思ったとおりの出来に大満足で気分も上がったそう。
やりたいことをすべてわかって作ってくれた、と絶賛していた。

さて、”あの”清水信之さん、と言われてピンっとこない人もいるのではないだろうか?
私も誰?と思った一人なのでどんなすごい人なのかちょっとご紹介を。
主にアレンジャーとして活躍されている方で、80年代ポップスの有名曲のアレンジなど数多く手がけている。
80年代の有名どころ、大貫妙子さんやEPOなどなどの曲や、
稲垣潤一さんの『クリスマスキャロルの頃には』もこの方のアレンジだったりする。
平松愛里 さんの『部屋とYシャツと私』もアレンジしていて、ものすごい蛇足だが平松愛里さんの元旦那様だそうです。

そんな大物アレンジャーのアレンジにより、80年代ポップスの雰囲気が流れているが、
60~70年代ソウルのフレーバーも入った仕上がりになっている。
アルバム全体を通して一番明るい曲調に仕上がっているのもあり、ポップス風アレンジということもあり、
昔のゴスペラーズっぽい雰囲気の曲だなぁ、とも思った。
中盤の濃い雰囲気から一変、空の雲がパーっとなくなっていって陽がさしてきたような爽快な気分にしてくれる。
このアルバムは絶妙な曲順だなぁ、と本当に感心させられる。
なんとなく、GTツアーにおける『約束の季節』のようなイメージがしたので、
ライブでは同じようにラストで使われるのかなぁ、と思ったりもしたが、実際どうなるでしょう??
そこのところも私は楽しみにしてます(笑)

 
G10投票 21位。

Yes,No,Yes...

安岡氏が、メンバーから大人に聞かれたら眉をしかめられそうなあだ名を付けられまでに至った問題作(笑)
歌詩はそのものズバリ、最中です(爆)
本人いわく、色っぽい詩は『熱帯夜』や『パスワード』でも書いてきてるから当たり前に受け入れられるかと思ったのに、メンバーにもビックリされて意外だったそう。

はじめはSPEEDが復活する際に提供しようと女言葉の詩を乗っけてたそうだがそれはまとまらず、
自分が歌うとして気持ちいいキーに直して、自分の声で自然な感じで歌おうと歌詩を書きなおしたそう。
曲自体がリードボーカルが一人で歌う部分がほとんどないので起承転結をあらわせず、
歌詩を書き始めたら大変で、「難しい曲を書いてしまったな…」と思ったらしい。
で、顔のないコーラスで作られているのを利用して、セクシャルなことを感情を入れずにやってみよう、と歌詩を書いたらこんなものが…(笑)

曲を聴く前から雑誌のインタビューを読んで色っぽい曲とは知っていたのだが、想像を超えていた(笑)
あの安岡氏のあま~い声と息の多い歌い方でこういう曲を歌われたらたまらない!
しかし、私は歌詩より安岡氏の”吐息”にやられてしまいました。
これはライブで聴いたら腰砕けそう~。

 

シアトリカル

酒井氏のひねくれた部分(爆)が全開のテンポのイイ曲。
ただノリがよくていい曲~…ではすまされないのはそのひねくれた歌詞によるところが大きい。
まずもって「人生はしょせんサーカス」なんてのがひねくれてる。
サーカスの終わりの「しゅうえん」(終演)が人生の「しゅうえん」(終焉)と同じという言葉遊びにしても、
選ぶ言葉が「終焉」っていうところが実に酒井さんらしい。
このサーカスを見る「げきじょう」(劇場)も、感情の昂ぶりの「げきじょう」(激情)とかかってるのでは、と個人的には思っているのだがどうだろう。飛び込んでくるんだよなぁ、「劇場」って言葉が。
おなじみK-Muto氏によるアレンジが歌詞の皮肉さを隠しているが、
たまに「孤独の翳り」なんて単語が飛び込んできてどきっとする。
ゆらりゆらり~」と舞台と客席の境界が揺らめいてなくなっていっているような気がして面白い。

今までだと、こういうもろに酒井氏!という曲は一人で歌いきっていたが、
この曲だと全員がリードを取っているのが、色々な技を見せてくれるサーカスのように感じられて良い。

「こここここ、ここに~」という遊びの部分、聴いたときにJOEの『Stutter』を思い出したが、
ちまたでは、ニワトリみたい、と評判である(笑)
とあるラジオでDJさんに「ニワトリソング」と言われた酒井氏が、
間髪いれず「ニワトリカル」と答えたのには喝采(笑)
酒井氏は、教育テレビで流れてる「恋するニワトリ」という曲を思い出してまずいなぁと思ったそうだが、
酒井氏ほど教育テレビを見ている人は数多くないと思うので無駄な心配だと私は思ってしまった(爆)

 

エンドロール

パチパチのインタビューを受けるなら、“二人の天才が生み出した楽曲”ということになるのか(笑)
北山氏曰く、実時間どおりに出来上がったそうな。
北山氏が天才なのか、ピアノを弾いた妹尾氏が天才なのか私にはわからないが。
作詩をした安岡氏も天才らしい。
今更説明することもない黄金コンビ、安岡&北山コンビなのであるが、
今回はデモの段階でタイトルが“エンドロール”となっていたそうである。
それにあわせて、映画好きな安岡氏が映画のエンドロールから思うところを表現したそうである。
安岡氏は北山という“仏”の教えを刻む“彫刻師”だそうなので、
私が言えることなどあるわけがないのでここまで(笑)

歌の完成度としては、北山氏のリードが多いため、正直言って他の曲に比べて落ちるといった印象を受ける。
北山氏の声質のせいか歌い癖のせいか、一本調子に聞こえる傾向があって
歌詩が深い分だけ物足りなさを感じる。
2番平歌の村上氏の地に足のついた歌唱と比較してしまうと、北山氏の更なる成長を期待しようと思うとともに、北山氏が生きる選曲というのも必要な気がする。
…こんなことを言っているが、あくまでも比較対照はゴスペラーズのメンバーなので、ハイレベルな比較だということをお忘れなく。

 

アンジュナ

このアルバムの面白いところのひとつが、この曲にも代表されるのではないかと思う。
王道ソウルもあれば、Reflectionsのようにファンク調の曲があったり、
Sweetのように少しブルージーな曲があったり、そして、この曲はとてもフォーキーな感じがする。
イメージはガロの「学生街の喫茶店」だそうだが、女性口調の歌詞は堀江淳の「メモリーグラス」をイメージしたんだとか。
(…と、ここまで書いて、どっちの歌も歌えてしまう自分がいやだ。また年齢をごまかしてるだろうと言われてしまう…。)
この曲はおなじみ松本圭司氏が書いたものに黒沢氏が歌詞を乗せるという、
今までは自分の曲に歌詞を書いてきた黒沢氏の作詞人生において初めての試みである。
アンジュナ”は黒沢氏が好きなカレー屋の名前だそうで、“思い出の香り”は黄色いんだろう(笑)

この曲もまた、とても想像力を刺激される曲。
一番刺激されたのは、サビの黒沢氏の歌いまわし。
とても柔らかな発声で、このアルバムの他の曲には(特に前半の曲)ないパターンである。
他の曲で歌われているのとは明らかに異なる感情表現が実にすばらしい。
殊に最近の黒沢氏は歌がうまくなったなぁと思わせるところだ。
コーラスのアレンジも柔らかくて、そこに待つ人物の心のうちを思わせる。
けっして激しい後悔でも相手に対する怒りでもなく、思い出から離れられないモラトリアムをうまく表現している。
歌詞を追うのではなく、歌を追うだけでもその曲の世界観は伝わる。
そのよい例。